e-SpiritPROFESSIONAL
大葉ナナコさん
出産と誕生を楽しみにさせるプロ

バースコーディネーターという言葉なのですが、初めてお聞きになる方も多いと思います。具体的にどういうことをされていらっしゃるのですか?

一言でいうと出産と誕生を楽しみにさせるプロです。産む前、産む時、産んでからの情報提供とセルフケアスキルの提供をしています。

このお仕事を始められたきっかけをお聞かせください。

興味を持ち始めたのは自分自身の初めての出産の時です。マタニティ雑誌には難病の話と商品情報ばかりなのが疑問でした。22歳だったんですけれども、すごく楽しい出産準備クラスに通ったんですね。夫婦で参加したんですけど、大人になってから学ぶ生涯学習、しかも夫婦で命のことを学ぶなんてすばらしい!!と思って。もっとオシャレに、もっと若い方が参加できるようなクラスが作れるかもしれないと考えてました。

また、欧米には『バースエデュケーター』という出産準備クラスの専門家がいるんです。欧米では出産費が無料の国が多くて、すごく安価で、いろんなスクールに通えたりします。日本にもそういうスクールが欲しい、そういう仕事があればいいのにって思っていました。

出産を体験して、その前に私もマタニティスクールに通って、自分にとって「安心して産めること」はすごく重要なことだなと思ったんです。「きちんと役立つ情報を伝えたい!」と。どうしてもお産って恐がられがちで、正しい情報を得てないがために、むやみに怖がられるってことが多くなります。でもちゃんと自分でやれることがこれだけあるよって。もっと女性の人生、カップルのライフスタイルとして妊娠・出産をもっと楽しめるようにっていうことで、しっかりやりたい。

私は「陣痛大好きだから」って言い方をしています。ほんとに陣痛って、なんて素敵にできているデザインなんだろうって思います。まだ言語化されていない世界のことや命のこととか、人知では到底、解答なんか出せないこととか、いっぱい体験するんでね。それはもう未知の世界を知るワクワク感そのものなので、クラス受講者はワクワクして帰られますよね。


『ロックの母方式』

このお仕事をしていて、たぶん幸せに感じる瞬間ってたくさんあると思うのですけど、逆にこのお仕事をしていて、辛いとか厳しいと思うのは、どんな時ですか?

厳しいのはね。やっぱり自分の子どもが熱を出していて、側にいてやりたい時も今日、臨月クラスだったら、お産になってしまうので休講できない。産後クラスでも私、自分の子どもを置いて何やっているんだろうとは思うときはあります。子ども5人もいますからね。

5人お子さんがいらっしゃるんですか?

昨年は大学生、高校生、中学生、小学生、保育園でした。


すごい。歳の差は何歳ですか?

上の2人は2歳違いで、その後みんな4学年違いです。一番上は20歳で、2番目は今、大学1年。3番目が中3で、4番目が小5で、5番目が小1。大学、中学、小学、といます。

ずっと子育てですね。

もう 18年、毎晩、絵本の読み聞かせをしていますね。

子育て含めて実際どのような生活をしているんですか?

よく聞かれるんですけど(笑い)。私ね。『ロックの母方式』って呼んでいるんですけど、6時に起きて家事やって育児して9時に家を出て、だいたい9時半から仕事があるんですよね。夜6時には職場を出るようにして6時半に保育園のお迎えですね。

家事とか忙しくないのですか?

家事も家族の仕事でしょ?じゃあみんなで家事やろうって言って、担当は分担してます。全部私がやってないの。だから一年生になったら米とぎデビュー。2年生になったらみそ汁デビュー。みんなワクワクしてるわけです。家族のみそ汁が作れるって。

洗濯物も『はーい、これから洗濯物タタミレース』って言ってね。誰が一番早くたたみ終わってテレビ見られるかって。そんなゲームのようにやっています。

楽しくさせるのが上手な感じですよね。楽しくやらされちゃいそうな感じがしますもん。

楽しいだけでは全然ないかもしれないけど、でも私自身はほんとに産んで良かったと思っているし、5人も育って楽しいし、未来の大人が5人来てるって感じ。だったら私も幸せな大人じゃなくっちゃって思います。あまり罪悪感を持たない考え方をして生活しています。


これから新たに挑戦したいことってありますか?

誕生学プログラムという授業を開講できる人材育成をしています。アドバイザーとしての「命の語りべ」というあだ名を頂いているのですが、その誕生学アドバイザーを千人まで増やしたいなと思っています。

公立小学校は今、日本に2万校あります。千人だったら年間20校回ったら、命の話をいっぱい子ども達にできる。誕生学プログラムは、親子で聞いてもらえます。日本の子ども達がみんな命ってすごい。自分ってすごいって思えて、いつか自分が家族が欲しいなって思える時まで、ちゃんと自分のセクシャリティを健康にセルフケアしたいと思える子ども達が増えて欲しいですね。

自分の体を大事にするティーンエイジ時代を過ごして、家族をワクワクしながら育てていってほしいなって、そんなロングスパンのプロジェクトに挑戦しています。

素敵ですね。

お産に関わるとだからすごく未来が変わります。あなたを産んで良かったという女性達が増えて、あなたの子どもを産めて私幸せって思う女性が増えたら、家族がどれだけ良くなるか。産まれてきて良かったって思える子どもが増えれば、未来もどれだけ自殺やイジメが減るかと思ったら、すごいやりがいのあるプロジェクトです。
これからは「命の力」を伝えたい。命を大事にする人達を増やしたいこれが今の目標。




Profile

大葉ナナコ(バースコーディネーター)

65 年東京生まれ。
女子美術大学短期大学部生活デザイン科卒業。
初産時から身体能力やセルフケア、精神保健に関心を
持つ。カウンセリングやボディワーク、出産準備教育
を学び、 97 年より、妊娠前からの出産準備クラスを
開講。 03 年バースセンス研究所設立。カップルでも
未婚でも参加できるプログラムが大学オープンカレッジ
などで好評を博し、各自治体と協働で出産・育児を
支援している。 05 年日本誕生学協会を設立。子ども
から大人まで、優しい誕生と出産の学びとセルフケア
教育を普及する活動を、親たち・医師や助産師と
展開中。東京都青少年問題協議会委員。
20 歳から 6 歳までの 2 男 3 女の母。「怖くない育児」「BIRTH」など著書・訳書多数。

http://www.birth-sense.com
http://www.tanjo.org

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