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21歳でダンスをはじめたダンサー 森山開次さん
自分を表現する手段、今はそれがダンス

今日はダンサーの森山開次さんにインタビューをさせて頂きます。よろしくお願い致します。

よろしくお願いします。

森山さんの少年の頃および若かった頃をお聞きしたいのですが。

小さい頃から踊っていたわけではなくって、どちらかというと……。内向的なほうで、今でもそうだと思ってるんですけど(笑)。

そんなことないですよ。

音楽が鳴ったら踊っちゃう子とかいますよね?僕はそういうタイプではなくて(笑)。
音楽が鳴っても、体を動かしたりするのはあまり得意ではないほうでした。体を動かすのが恥ずかしいっていう子でしたね。 だから幼稚園の時の盆踊りとか学芸会があっても、表現をすることに、ちょっと照れがあったり、赤面症だったり、 手を挙げて発言することとか、そういう体を動かすことに限らず、なんかこうアピールしなければいけない時にできない子供でした。
ただ内向的ではあったけれども、何か作ったりすることが好きだったんですね。
体では思うように表現できないけれども、何か絵を描いたり、ものを作ったり。図工、工作大好きで。とにかく作ることが好きでした。 どちらかというと画家になったりとか、そういう手先を使って作ることが興味にあったんだと思うんですけど。

そうですよね。ホームページを拝見したところ、イラストとかも。

はい。落書き程度なんですけど。

いえいえ。なんか幻想的で素敵だと思いました。

(笑)。ありがとうございます。そのほうが好きなんですよね。今でもそういうのは好きなんですけど。
でも自分の中にあるいろいろなものを表現するのに、いろんな手段はあると思うんですけど。なかなかこれだというのはなかったんですよね。
どちらかというといろんな表現する手段を探していたような感じで、いつの間にかダンスに辿りついたっていう感覚です。

肩甲骨で踊る

ダンスをはじめられたのは20歳過ぎてからだとお聞きしました。

21歳ですかね。
その当時、大学に行っていたんですが、もやもやとしていたんです。自分が何をしたいのか悩んでいた。 その頃に、舞台の上で表現する人がいたりする。そこで何か輝いている様を見て、自分もここで何かをしたいと思ったんですね。
その時見たものがたまたまミュージカルだったので、ミュージカルの研修所に入って、歌とかお芝居とかダンスをいっぺんに習い始めました。
どちらかというと踊りはあまり興味がなく、一番興味があったのは歌だったんですけど。 でもいつの間にか、その踊りとの出会いが徐々に徐々に、自分の中では蓄積していって。

表現がだんだん体を動かしていく、踊るというところに繋がっていった。

そうですね。

肩甲骨で踊るって表現を森山さんのHPで拝見しました。
僕はあまりダンスがよく分かんないんですけど、どういうことなんですか。


そうですね。肩甲骨だけで踊るわけではないんですけど、ほんとに体にはいろんなパーツがあって、その中でも大事なところってのが特にある。
どこが一番ってのはほんとにないんだけど、でも人間の表現として一番、長けてる部分。 一番って言ったら語弊があるかもしれないのですが、手での表現が人間は大事だと思うんですよね。
日本人はあまりジェスチャーとかしないけど。なんかこう手の表情をたくさん作ることができる。 ダンスでは腕のバランスのことをアームスって言うんですが、アームスをきれいに使うにはどうしたらいいかっていう時に一番根本になっているのが肩甲骨を使うことで手を動かしていくってこと。
よく言うんですよ。バレエでもそうだし。
以前やった「スケリグ」という芝居では「肩甲骨が羽のナゴリだ」という説がモチーフの作品でした。 ひょっとしたら肩甲骨は昔は羽根だったかもしれないとか思うのは素敵じゃないですか。

ファンタジーだと思いますね。

進化論的なことは別として、そういう感覚が自分のどこかにある。
自分は今でもそういうのを信じちゃう肩甲骨だけではないんですけど、 ちょっと背中を丸めていれば、寂しく見えたりする。ピンとしてれば元気に見えたり。

そうですよね。

そういうちょっとした動きで人の気持ちが出てくる。表現しようと思わなくても現れるじゃないですか。背中の表現がとても大事。

あたらしい表現がうまれる瞬間

抽象的なクエスチョンなんですけど。新しい表現が生まれる瞬間って、どういう時ですか?
よく神が舞い降りるとか。笑いでも笑いの神様が笑うと、いい笑いが生まれるとかって表現があるのですが。

僕はあまり踊りの神様とかは信じてなくて。自分に神様が舞い降りるって感じはないんですけれど。

何かが舞い降りてくるというよりも、いろんなものの力とか、人の力とかが、自分の体に宿るっていうわけじゃないんだけど、 助けになるっていう感覚があるから、湖で踊れば湖のその場の空気を自分が感じて踊ることが僕の助けになるし。 そこで沼の神様が乗り移って踊るって感覚ではなくて、やっぱり僕は神でもなんでもない、一人の体にすぎなくて。 それは誰しも持っていて、特別選ばれた人間だとは思っていないんです。

蓄積的なものってことですよね。

「新しい表現」は踊りの場合、突発的に「新しい」って生まれるものではないような気がしますね。
踊りだと、一瞬の瞬発力のように思うかもしれないですけども、それまでの過程やトレーニング、自分の経験とか、 いろんなことが混じり合ってくる中で生まれてくるのが「新しいもの」につながっているんだと思う。

積み重ねの中でいつの間にか生まれてくるんですね。
新しいものが生まれたっていう実感よりも、生んだ後に、今やったことを振り返ると新しかったって気がします。

将来の自分が何をしているのか楽しみにしたい!

今後、挑戦したいことってありますか?

挑戦したいことが、たくさんあるんですけど(笑)。

たくさんでもいいですよ(笑)。

僕はダンサーにいつの間にかなったタイプで、小さい頃から絵を描いたりすること。 いろんなスポーツをやったりとか、その時、その時、目の前にあることをひたすらやってきて、その時に出会ったものが繋がっていって、 いつの間にかダンスをやっているので、これから先、また「ダンス1本だ」と、自分を縛りたくないんですよね。
今はダンスを一生懸命やっているけども、その中でまた生まれてくるというか、感じたもの、出会ったものに影響を受けて変わっていきたいと思っているんですよ。


ダンスにはこだわらないってことですか?

自分のやりたいこと、これから変わっていくことを恐れないっていうこと(笑)。 いつも肩書きに困るんですが、それは自分の肩書きに縛られたくないからです。

もしかしたら10年後とかは例えばですけど、映画監督になっているかもしれないじゃないかと。

可能性の話としてはありますね。
将来、何になっているのかは自分で楽しみにしたい。目標を決めないでいきたいです。 今までそうだったし、今の自分が持っている夢を裏切るぐらいの自分になっているのかっていうことを、自分自身が一番楽しみにしたいと思っています。
歌手になるかもしれないし、役者になるかもしれないし、絵描きになるかもしれないし。ただ踊りっていうのは、自分にとっては大きな財産だから、踊りというものを捨てるという考えではないです。

今までやってきた絵を描いてきたこととか、いろんなスポーツをやってきたこととか、いろんなことを経験したことが今の踊りに生きていると思ってるし、 例えば歌手になったとしても、今やってることは確実に生きてくると思っているので、ダンサーを辞めるとか、そういう感覚ではないです。

元気ない時にガッツポーズするだけで元気が少し出てくる!

若者に向けてのメッセージをお聞きできればと思います。
森山さん自身もいろいろ迷われて今があるだろうし、今ももしかして迷ってるところもあると思うんですけど、そういった時、 森山さんはどういうふうに自分を励ましていったのかとかをお聞かせください。

多分、誰でも悩むことはあるし、迷いもあると思うんですよ。どんなに立派な人でも。個人差はあると思うけど。
ただ自分の夢でも、人との関係とか繋がりとか、仕事とか、そういったものがダメになった時に投げ出してはいけないと思っているんですよ
やってみて、途中で投げ出すことが自分の中で迷いをもっと大きくしてしまうと思うから。

でもね。そのまま続ければまた上がれると思うんですよ。一度落ちても。
そこで上がれるまで頑張ればいいんですよね、きっと

そうなんですよね。

やめないで続けていればチャンスがくると思うんですよね。
だから自分も何度も全てから逃げ出したいと思ったことあるけど。 やっぱりそこで投げ出さないできたから良かったと思うし。
でもこれからもやめたいと思うことはあるかもしれないし、その度に負けないでやるしかないですよね。

マイナス志向ってスパイラルするじゃないですか。悪循環で。
でも最近気が付いたのは、プラス思考もスパイラルするんですよね。乗ってくると、どんどん乗ってくるってあるじゃないですか。
自分の生きてるテンションでもそうだと思うんですけど。

そうですね。やっていることを続けろってことですよね
あとはやっぱり一人で悩むと良くない。結局、一人じゃ生きられないんで。

弱味を人に見せてもいいわけですもんね。

人と関わることでいろんなものが生まれてくるから。
僕自身気をつけていますが(笑)、そうやって一人で閉じこもって動かないで無になっていくのが一番良くないって思うんですよ。
踊りで言ったら、動いていることってのが大事で、止まるの部分もあるけれども、静っていうのは動いてるんですよ。踊りの中ではすごく。 停止ではない。だから一人で悩んで心が動かなくなること、体が動かなくなることっていうのは一番良くないというか。
もちろん身体的に動かなくなっていく人もいると思いますが、その分、心を動かして、体のもとになる気持ちを動かしていくことは大事ですね。

モチベーションがどうしても落ちちゃうことがあるじゃないですか。
そういう時にモチベーションを上げるような方法って、どういうふうに森山さんはしているんですか?

僕は「音楽」をきくことと、これはよく変だと言われるんですけど「縄跳び」ですね。
どうしても落ち込んだ時は、朝、出発する前に縄跳びをやると、理由は分かりませんが多分、体を動かすことが脳みそが反応するのか、ハイテンションになりやすいんですね(笑)。
元気がない時に、体を動かすことは、それは踊らなくても釣りに行くでも歩くでも、なんでも行動に出ることが自分の心を盛り上げてくれると思うんですよ。 元気ない時に元気あるようにしようと自分の中でガッツポーズをするんですけど、それだけで元気が少し出てくる


なるほど。納得しちゃいますね。

それでいいと思います。
踊りは日常の身近な動きやそれがもたらす気持ちの変化みたいなものにこそ踊りのモトになる姿があるような、そんな気がしています。

分かりました。
本当にいろいろと良い話ありがとうございました。
すごく落ち込んだら、縄跳びしてみます。今後のご活躍楽しみにしています。




Profile 森山 開次

1973年12月19日生まれ 神奈川県出身

今最も次代の活躍が期待される注目のコンテンポラリーダンサー。
しなやかながら直線的で空間を切り裂くような独特の動きに定評があり、'05年ニューヨークタイムズ誌にて「驚異のダンサー」と評される。 能とのコラボレーション、和の素材をモチーフとした独自の表現世界で注目を集める。 国内海外でソロ作品を発表する一方、映画・テレビ出演等ジャンルを超えた斬新な表現活動と、時代を映し出す稀有な存在感に高い注目が集まっている。 3/11草月流80周年記念式典出演(両国国技館)、5月ミュージカル『LUV』にて歌に初挑戦の後、 6月イタリア「ベネチア・ビエンナーレ2007」にてソロダンス新作『The Velvet Suite』を発表予定。
http://kaijimoriyama.com [ 所属:オフィスルウ ]

経歴

■映画
'04年 7月公開 『茶の味』(石井克人監督、浅野忠信他出演)守山モリオ役
2004年カンヌ国際映画祭監督週間オープニング
'05年 「乱歩地獄」内『火星の運河』(竹内スグル監督、主演:浅野忠信)※作品協力
'06年 春公開 『ナイスの森』(主演: 加瀬亮)公開
■TV
'03年 CX『DANCE STYLE』
'04年〜 NHK教育『からだであそぼ』月〜木 レギュラー出演中
毎日放送『ポートレイト』・TBS『ポートレ』
'06年 NHK『トップランナー』
■TVCF
'03〜04年 マンダム『GATSBY』"幸せなら毛をたたこう篇"(メイン・本木雅弘)
■モデル
'04年 『MEN'S non-no』「UNDERCOVER」特集ページ
『家庭画報INTERNATIONAL』
'05年〜 『relax』『POPEYE』『MEN'S non-no G』ほか
■舞台
'02年 ソロ作品『Lamazuella』演出・振付・出演(東京・香港・ソウル・台北・メルボルン)
'04年 舞台『盤上の敵』(青山劇場、大阪シアタードラマシティ)出演
ソロ作品『OKINA』(新国立劇場)演出・振付・出演
'05年 ソロ作品『KATANA』(ニューヨーク・モントリオール)
ミュージカル『星の王子さま』(新国立劇場)へび役
ソロ公演『Namida君 VOL. 1』(青山円形劇場)演出・振付・出演
東宝ミュージカル『眠らない音』(青山劇場)
'06年 演劇『スケリグ〜肩胛骨は翼のなごり〜』スケリグ役(東京・仙台・北九州)
ミュージカル『クラリモンド』悪魔役(東京・名古屋・仙台・大阪・兵庫)
ソロ公演『KATANA』演出・振付・出演(東京・名古屋・広島・大阪・札幌) 他多数

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