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チェスチャンピオン 小島慎也さん
チェスに関しては負けず嫌い

まずチェスをはじめたきっかけから教えてください。

そうですね、えっと、中学の私立受験をしたんですけど、その受験が2月に終わって、中学入学前に自宅のパソコンの中にチェスのゲームが入ってまして、それでちょこちょこと動かしてみたのがはじめです。中学入学の直前ですね。

小6とか。

そうですね。
確か麻布に入学を決めた後だと思うんですけど、チェス部があるということを知ったので、まあ入学してから本格的にはじめたということになると思います。

麻布って中学校もチェスが強いんですか?

まあ、強いって言うか、部活は中1から高2まで一緒にやるんで、入って高1、高2に教えてもらう感じで。


麻布のチェス部自体は大会みたいなもので上位に行くような部だったんですか?それとも小島さんだけ?

上はレベルが高いですね。今回のトリノチェスオリンピアード(2006年5月に行われた大会)のときは全体6人のうち5人が麻布のOBでした。

じゃあ、麻布高校といったら、チェスでは名門なんですね。

そうですね。他に中高から始められる環境があまりそろってないという点ではそういう理由もあると思いますけど。サッカーとかだと入っても体つきから違うから高2と中1で試合ってできないですけど、そういう点ではチェスって成長するチャンスがあると思うんです。

いつくらいから、俺いけるかもしれない・・・みたいな確信をえられたのですか?

ひとつの大会として自信が付いたのは中1の3月の最後の合宿なんですけど。

中1って入って1年経ってない感じですよね?

まあそうですよね。

もうそこからずっとチェスやっていけるぞっていう確信がもてたんですか?

まあ、具体的なことをあげるのは難しいですけどね。
ひっぱられた要因は同級生に強いやつがいて、彼はアメリカの小学校に通っていて、5年のときに帰ってきて受験したやつなんですけど、彼はアメリカ大会でも名前を残しているようなやつで実力があった。
元からそういう強い同級生がいたってことですかね。
入部当初から彼は先輩と同じくらいのレベルだったんです。

それはライバル?それともこういう風になりたいなという理想?

今はライバルです。
昔は目標というか…負けたくないという思いがありました。


負けず嫌いですか?

負けず嫌いではあると思います。

チェスじゃなくても?

それはどうですかねー。

じゃあ、自分の性格はどうだと思いますか?

興味があることにはのめりこみますけど、ないものにはとことんどうでもいい。
やりたいと思ったことはすごく勉強しますね。
チェスはかなりやったと思いますからね。

今は部活引退したんですけど、引退してからのほうが勉強してますね。

そうなんですか。

部活引退すると後輩の面倒見なくて済むので、自分のことに集中してできるから。

でもチェスやるときって相手がいないとだめですよね?

いや、棋譜を見たり、本を読んだりということができるので。

今もまだ本を読んで勉強になることってあるんですか?

ありますよ。ほとんど海外の本ですから。って言うか、自分まだまだなんで。


これから大学に進学した後は、どうやってチェスをやっていくんですか? 

やっぱり個人で。今と同じですよ。
一人黙々と研究して、日本のトップ同士で集まって研究みたいのをする。研究か大会かみたいな。

その集まりはどのくらいの頻度であるんですか?

いやーー、最近あんまりやってないですね。
大学生も後半になってくると忙しいので。3月に一回身内で大会開きましたけど。そんなにちょくちょくできるものでもないですからね。
チェスの勉強は正直チェス盤とやる気さえあればどこでもできるんで。大学のサークルとかはあんまり関係ないですから。


羽生善治さんとチェスで戦うということ

将来の夢とか野望は?戦いたい人とか。

ウーーーン…

もっと言っちゃうと将棋羽生さんと戦いましょうよ。挑戦状たたきつけて!
ちなみに小島さんと羽生さんってチェスだとどっちが強いんですか?

いや、羽生さんのほうが強いですよ。

いや、だから戦ってほしいなと思って。チャンピオンじゃないですか。

そうなんですけどねー。

チャンピオンって言っている以上、強い相手を1人ずつ倒していったほうが良いと思いますよ。
その一番わかりやすいのが、羽生さんじゃないですか。

いや、ちょっと飛びすぎかなと。まだ国内でももう少し倒さなきゃいけない相手がいて。
羽生さんちょっと、かなりチェスのほうでものってるんですよ。

だからチャンピオンがそれを許しちゃだめですよ。

そう簡単に言いますけど(笑)。

羽生さんとの対戦は実らなかったんでしたっけ?

そうですね、なかなか機会がないですし、あんまり羽生さんは協会のほうの大会には来ないですし、協会のほうにきたのは2年前が最後ですね。海外メインで試合してますね。


やっぱりぜひ羽生さんと!
やるからには勝ちたいってあると思うんですけど、レベルがわかるじゃないですか。
スケジュールは忙しいかもしれないけど、小島さんが挑戦状たたきつけたらおもしろいじゃないですか。羽生さんも「おっ」と思いますよね。

うーーん。
日本チェス界だと羽生さんが日本で一番強いんですが。

いやじゃないですか。将棋やって、チェスも一番強いなんて。

そうなんですけどねー。
まあ今の日本のチェスプレイヤーの目標としては、チェスで羽生さんより強くなるということでだいたい一致しているんですよ。

もし闘うとしたら国際大会とかで当たらないとって感じですか?

直接対決でもいいんですけど、羽生さんが持っている国際的なレートをぬくっていうのが・・・

ああ、そこに並んでいないと挑戦状叩き付けづらいなということですね。でもチャンピオンていう冠があるじゃないですか。

あるんですけど、なんか向こうが見向きもしない冠なんです。

夢というか、目標としては羽生さん倒したいってありますか?

ありますね。

それはいつくらいのタイミングで。

どう考えてみてもあと早くても4,5年先じゃないですかね。

チェスと日本

チェスは日本と海外の差がまだあるですか?

まだあるっていうか・・・かなりある感じ。

日本って今順位的に世界の中のどこらへんにいるんですか?

日本は結構厳しいですよ。
トリノオリンピアードだと男子は148カ国出たんですかね。
そのうち87位でしたから。まだまだですね。

強い国はどこなんですか?

これもオリンピアードの順位で言うと、アルメニア、中国、アメリカでしたね。

ロシアも強いんですか?

ロシアは3代連続で世界チャンピオンはロシア人ですね

アジアの中で国がチェス棋士の育成に力を入れているのはインドネシアですかね。
政府が援助して、チェスの専門学校とか作ってるんです。

日本には専門学校なんてないんですよね?

そんなものがあればぜひ行きますけど、講師がいないですよね。

逆に講師ですよね?

まあそうですね。でもまだ教わる側にまわりたいですからね。


やっぱりもっと海外でいろいろとやりたいですか?

やりたいですねー。

世界チャンピオンはいけると思いますか?

正直かなり厳しいです。

でもまだ若いじゃないですか。

若いんですけど。まあこれからちゃんと環境が整えばまだ延びる可能性もあると思うんですけど。
今の状況では・・・今の自分がトップに立てる感じでは、環境が厳しいです。

留学を考えたりは?

考えはありますけどね。

行くとしたらどこの国に?

正直どこでもいい気がするんですけど。
アメリカもジュニアはレベル低いですし、結構トップが強くてもやってる人口が少ない国はあるので。
あと今年オリンピアドで優勝したアルメニアなんかは行ってみたいですけどね。
あと個人的に気になっているのはハンガリーなんですけど。

東欧が意外に強いんですね。

強いですね。

ロシアとかはどうですか?

ロシア過ごしにくそうだなと思って。
寒いの苦手なんですよ。
留学となると、チェス以外の環境のことも考えなきゃいけないですからね。


海外の本で勉強するとおっしゃってましたが、何語なんですか?

ほとんどが英語ですね。

英語はぺらぺらですか?

いや、全然です。だましだましで。
辞書使いますし、チェスの説明だとなんとなくわかりますね。普通に会話するよりチェスの話するほうがわかりますね。
検討っていって、試合のあとにどこが悪かったとか話し合うんですけど、ジェスチャーつければなんとなくわかりますし。

それは対戦相手と話し合うんですか?

そうです。
別室に移動して「自分はここではこういう手も読んでた」とか「ここはこっちのほうがよかったんじゃないか」とか。
その場で対戦相手と一回ちゃんとやって、帰ってからコンピューターでちゃんと調べて2段階でやりますかね。
自分がそのときどう考えてたのかっていうのを、考えを持っているうちに対戦相手にぶつけあったほうが絶対ためになるんで、検討は絶対やらなきゃいけないんですけど。

チェスを広めていくこと

今後のチェス棋士としてやりたいことはありますか?

今後の目標としては、もうちょっと日本にチェスというものを広めるというよりも、チェスって日本人が聞いたときにインテリアの一種みたいに考える人が多いので、ハリーポッターで出てきた小道具みたいな。
まずそういうイメージを変えていきたい。ちゃんとゲームの一種として認めてもらうというのが近い目標の一つですね。
大きな目標を言えば、海外でコーチとしてやりたい。
この国で普及という活動につとめてもいいんですが、やっぱりもうちょっと上のレベルを目指したいと思うんで。

そうすると海外に渡るということが必ず必要になると思うんですよね。長期で。

中田選手みたいに海外で活躍して、最後は日本に戻って。

日本で教えるほどいればね。
まあ、自分がどれだけ普及してどういう条件になるかって言うことが重要かと思うんですけどね。

では今後の活躍を楽しみにしています!
羽生さんとの直接対決も!




Profile 小島慎也

1988年生まれ。
名門麻布中学・高校とチェス部に所属し、レベルの高い同級生・先輩の中で実力を発揮。

2005年史上最年少で全日本チャンピオンに輝き、翌年連覇を果たす。
世界を視野に入れ、挑戦を続ける。

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